譜読みをレッスンする(2011年10月レッスンの友掲載)その2

それではここで、レッスンの実践です。生徒の理解力、学年、経験、知識などによって、臨機応変に対応していくことが必要です。

  • 教材:W.A.Mozart:Allegro Kv.3 B-dur

とりあえずは、A,Bまでレッスンすることにします。

生徒の理解力、経験にもよりますが、最初にモーツァルトについてのお話などをするといいでしょう。

  • 弾く前に

まず、忘れてはいけないことは、拍子、調、テンポの確認です。

調に関しては、変ロ長調の音階を弾かせます。多少の経験があれば、変ロの音を与え「ここから(長)音階を作ってごらん」というと、迷いながらでも作れることもあります。迷いながらでも自分で音階を作ることが大切です。なぜならこのとき生徒は、「自分の内なる音」を捜しています。

テンポに関しては Allegroの意味(ただ速いだけではなく、快速に、という意味であることも忘れずに)を教えます。今までAllegroの曲を弾いたことがあれば「どんな曲だったかな?」と思い起こさせることも必要です。

この曲の場合、2拍子は、トを入れて数える(1ト2ト)が良いと思います。

もちろん最初から速くは弾けないので、ゆっくり弾くのですが、速い曲をゆっくり練習するときは、てきぱきとテンポをとるようにすると、テンポの移行がしやすくなります。

たいていの場合、片手からすることになるでしょう。(読譜力があれば、両手で弾いてみてから、片手ということも考えられます。)

強弱に関しては、記してある版もあると思います。何も書いていなかった場合、レッスンの過程で、生徒の能力に応じて一緒に考える、ということもあると思います。

  • 指使い

版によって、指使いが書いてあることもあります。ここで、教師は楽譜の指使いが、その生徒に適切な指使いかどうかを判断し、提示することが求められます。譜読みの時、指使いも一緒に読み込み、覚える(頭で覚えるのでなく手が、体が覚える)習慣をつけることが大切です。必ず決めた指から出ること。(左手出だしは4.または3、右手は5-4-2 と続くのが妥当だと思います。)一回弾くごとに違う指使いを使うと、指が迷ってしまい、正しい弾き方が身につかなくなります。指使いを考える、模索することは必要ですが、一度「良い指使い」が見つかったら、毎回その指使いで弾く、「手を迷わせない」べきです。

  • 分割について

生徒のキャパシティー(取り込み能力)によっては、Aの部分だけ練習して、Bの部分だけ練習して、後で合わすことも考えられます。その場合特に気をつけなければいけ得ないことは、合わせたときに○で囲った休符を正しくとることです。(これは、後半とつなげると気にも言えます。この曲の八分休符は、次の音の準備と考えるといいと思います。

  • 左手

テンポをきちんととり、リズムに乗って弾くこと、指使いを正しく守る。手の状態をよく保つ。B-C-Dと上行する時の気持ちの変化、休符の取り方、次の音の準備など、その時できること少しずつ項目を増やし促していく。左手が音楽のベースになることも、意識させるといいと思います。

  • 右手

アウフタクトの入り方、心の中で必ず「1と2と」を数えるようにする。出だしの八分音符の前に、八分休符を感じるようにして、その休符を音出しの準備と考えるといいと思います。スラーのかかった2つの音を弾く時の手の動きに気をつける。そのスラーだけ取り出して、練習するのもいいと思います。○で囲った休符のタイミングと次の音の準備。ハーモニー感のある演奏などもチェックすべき項目です。

  • 両手

両手に移る前に、教師がもう片手を弾いて、うまく合うかどうかチェックするといいと思います。生徒が、片手を弾きながら、先生の弾くもう片手の音も聞けるようにすることが必要です。片手から両手に移るのは、とても大変なことです。両手に移る前の段階として、教師がもう片手を弾いて合わせてあげる練習は、「聴く訓練」になると思います。

両手に移った時に、左右のバランス、ハーモニー感などを確認させます。

必ずしも片手ずつの練習がパーフェクトになってから、両手にする必要はないと思います。むしろ、頻繁に片手⇒両手⇒片手⇒両手⇒・・・と往復するほうがいいと考えられます。「両手を合わせる状態を考えながら、片手練習をする。右手がこのように弾くから左手はこのようにしよう」という意識をつけることが大切です。そのために、早い段階で両手の状態を知っておくことが必要です。

レッスンの中で、ある程度のテンポ、曲のリズム感、表情などが「できた」という感触があるまで、これを繰り返すと良いと思います。

教師には「生徒の頭の中の状態を把握しようと努めること、生徒が何を聴いていて何を聞いていないかをよく観察すること」ということが求められています。

片手を数回ひいて、両手で弾いてみて、うまくいっているかどうか確認する。生徒が気がついていない項目があったら「テンポはどうだったかな?音は弾んでいたかな?」などと特定のことに目を向かせる。また、その項目を気をつけてもう一度片手で弾いてみる。このような言葉を通じて、生徒のキャパシティーを増やしていくことが大切だと思います。

片手練習⇒両手練習⇒完成 ではなく、片手⇒両手⇒片手⇒両手⇒・・・・と進む中で、注意する項目を増やしていき、少しずつ高度な演奏にしていきます。

  1. 教師は、「促す」役目に徹すること。「こうしなさい」ではなく「この点はどうだったかな」という問いかけをする。
  2. 生徒が、自分で「考える」「捜す」ことを大切にすること。
  3. 譜読みの時に注意しなければいけないことを生徒が把握し、生徒がひとりで「音楽を読む」ことができるようになることが目標です。

上達するかどうかは、「毎回正しく弾いているか」「一回ごとにキャパシティーを広げているかどうか」の2点にかかってきます。楽譜には、表面上「テンポに気をつけて」「ここのフレーズは歌って」などと書いていないことが普通ですが、その曲の内容からその表現方法を読み取ることが、本当の「譜読み」=「音楽を読む」と考えるべきです。

(なお、この記事の著作権についてですが、レッスンの友社は解散したため、大竹道哉に著作権があるものと考えて掲載しています。)

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