シンフォニアを書いてみて
先日、バッハのシンフォニア10番についての質問がメールであった後、気になったので、何度も弾いてみた。翌日、大学の空き時間に、あることをしようと思った。
シンフォニアを暗譜のまま五線紙に書いてみる。楽譜は3段にして、中声は、アルト記号の譜表にする。
これは、以前も自分でやったことがあるが、多くの気付きにつながった。つまり「覚えているものは意識しているものであり、覚えていないものや思い出しにくいものは、意識されていないものである。また、これによって、自分が普段バッハに限らず、どのように楽譜を読んでいるかが自覚できる」ということ。
まず、中声が一番認識しにくい。どのような休符があって、どのタイミングで出だしがあるのか。また、右手、左手を行ったり来たりするときに、跳躍なども自覚されていない。
もう一つ、長い音や、大きな単位のリズムなど。
要するに「同時に起こっていることを両方見ていない」ということが多い。「シンフォニア」は、3声でそれぞれが有機的に動いている
6月24日に楽譜を取り出して、第10番ト長調を弾きながら暗譜をし直す。25日の午前中、暗譜のまま書いた。この時はピアノを使った。
27日に、第3番ニ長調を練習して、28日に暗譜でピアノを使わずに書いてみた。
ピアノを使わずに書いたのは、「頭の中でどれだけ明確に音楽が鳴っているか?」を知りたかったから。単に「確かめる」というだけでなく「能動的に頭の中で音楽を鳴らす訓練」にもなったと思う。
このようなことをすると、楽譜の見方も変わってくる。楽譜を見るとき、自分の音を聴くときの緊張感も少しはましになるだろう。
この勉強の仕方は、次のことがヒントになっていると思う。
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「ナディア・ブーランジェとの対話」ブルーノ・モンサンジャン著 佐藤祐子翻訳 音楽之友社 79ページ
記憶力
バッハの《平均律クラヴィーア曲集》は、心の友として常に私の人生の傍らにありました。父の亡くなる時分には、もう空で覚えていたんです。同じように暗記していたはずの父も、さぞ満足だったに違いありません。
十二歳ですでに平均律を暗記していた、とおっしゃるのですか~
必要に迫られたのです。プレリュードとフーガを毎週一曲ずつ必ず暗譜で弾かされましたから。でも、それは別に取り立てて言うほどのことでもないでしょう。プレリュードとフーガを週に一曲ずつ暗譜するなんて、大したことではありませんよ!私の今やっているクラスでも、それ位のことは生徒たちに要求します。各声部を別々に暗記させ、書かせるのです。そうすれば、彼らは全体の調和をバランス良く再構築できるようになるはずです。この種の訓練の結果、知識が広がり豊かになるのです。ですから、何を隠そうクラスで役得をしているのはこの私なのです。何しろ妄言が新たなる払別の広がりを持って、私の感興をそそることになるのですから。
しかし、それはまた何とも苛酷な要求ですね!
苛酷とは乱暴な!
確かモンテーニュだったか、「もし記憶がなければ、私には過去も現在もなく、ただ何の脈絡もない極めて刹那的な事象があるのみである」と言っていましたっけ。ですが、私たちは永遠に「過去の体験があって今に生き、今を踏まえて未来に備える」、という方程式に照らしながら生きるに過ぎないのです。
それをもっと深刻に意義づけて説いたのが、ベルクソンの指摘するところの「意識、記憶、予期」なのです。また、聖トマはそれについて「過去の顕在、現在の顕在、未来の顕在を喚ぎとらねばならない」、と述べています。
音楽の読み取りや聴き取りにおいても、もしも前の音を記憶していなければ次に来る音は予測不可能であり、妄言が孤立無縁の、無意味な音の羅列を読み連ねることになるのです。音楽は殊に記憶という現象を伴います。ですが、それは絵画とて同じであると言えましょう。
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ブーランジェが、どのような授業をしたか、知りたい。また、それをよく知っていらっしゃるこの本の翻訳者でもある佐藤祐子先生に、もっとご開示いただきたいと考えている。今、この時代にこの日本で西洋音楽をやっている人たちに、きっと指針となることがその中にあると思う。
あるいは、私たちが「きっとブーランジェ先生はこうお考えになるだろう」と想像(創造してしまうかも)するのもいいかもしれない。そうだ、きっとバーンスタインの「Young people’s concert」は、その「ブーランジェからバーンスタインにひきつがれたもの」かもしれない、と思う。
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