ハノンのはなし
・先日、大人の生徒と食事をしていた時の話題です。「アマアのピアニストの人で、ハノンをひき続けると気持ちがよくなるのでいい、と言っている人がいる。」とのこと
・それってトランス状態?精神的にアブナイ状態なのでは???もちろん、ピアノの上達云々とは、関係なくなってしまう。
・まじめに「ハノンがいいかどうか」ほんとうに考えてみるべきだと思います。まず、気をつけなければいけないのは、
- 「ハノンの指の動きが単調で、音楽の演奏時における音への感情移入を拒絶する(練習になる)」ということ。「このように弾こう」と思うことと「このような音が出る」ということとの間の結びつきを、切り離してはいけない。切り離して弾くということは「切り離すための練習」「音の質を考えずにただ音を並べていくための」練習。つまり「音楽はいいから音だけ並べる」ための練習にほかなりません。一度、「音だけ並べる」ようになってしまうと、練習中に「音楽」は無視され、最後にどうしようと思ってもできない状態を作ってしまいます。
- 特に最初のほうは、指返しが全くない。楽曲の指の動かし方とはかけ離れていること。「ハノンの指の動かし方は、たくさんある手指の動かし方のうちの、わずか一種類」ということになります。それらのことを踏まえて、「ハノンを過信しない」ことは必要だと思います。私は、バーナムを使っていますが、それは「さまざまな動き」があり、偏らないからです。ただそれも、「ただ弾く」にならないように、表情や強弱、指使いを変えてみたりテンポ、リズムを変えてみたりします。実際の楽曲にどのように役に立つか考えながら、時には応用としてショパンやベートーヴェンの楽曲を弾いて見せ、今の練習がどのように役に立つかを示すこともしばしばです。
・教師は絶えずこれらのことに目を配らせていくべきだと思います。「今までやってきたから」という惰性ではなく、一つ一つの項目に「目的」をよく考えていくことが必要だと思います。