「伴奏」は静かに弾けばそれでいいのか
よく「伴奏だから静かに弾きなさい」と耳にします。だからと言って全く聞こえないのでしたら作曲者は伴奏パートなどは書かない方がよかったのです。
では、伴奏は何のためにあるのか?
・拍節を刻み、テンポを明示する。
・ハーモニーを示し支えて変化させる。またそれによってカデンツ(終止形)を作る。
・曲の躍動感を作る
メロディーを支え、補佐し、方向を導き、動きを与える役割です。つまり、それらの役割を出す音量と弾き方が求められます。「補佐」や「方向」を与える以上は、それなりの動き、表情が必要です。カデンツをよく理解し、伴奏の中に起伏があることが求められます。つまり伴奏も「歌う」ことが求められています。メロディーは、自然と目につき歌うことを考えますが、伴奏になるとそのカデンツの中にある起伏も無視し、平板に弾いてしまう演奏をよく聞きます。しかし、カデンツを示すだけでもこの中に「起伏」が感じられ、気分の変化やテンションの変化が存在します。ですから「伴奏を歌う」ことを忘れずに、それによってメロディーを動かし音楽に「生命」が感じられます。「伴奏」にも「血液」を流すように・・・・
ここで、伴奏形の代表であるアルベルティーバス、この名前の由来になったアルベルティー(Domenico Alberti, 1710年前後 – 1740年)のチェンバロソナタです。①
アルベルティーバスを分解してみます。
いろいろな楽器に割り振ったと考えてください。②1だけ弾くと、曲の進行、和声もある感じはしますが、浮遊した感じになります。1だけ弾くと安定はしますが、躍動感のない空虚な感じがします。3はあとうち、ちょっとここではそぐわないですね。4は拍節が、くどい感じがします。ここでは考えませんが、拍節をとにかくはっきり示したいときに考えてもいいかな、と思います。K.545の場合は、1と2を組み合わせたものとして考えると妥当だと思います。
練習の時、このように分解して弾いてみると、伴奏の弾き方が変わってきます。音の役割が見え、どのパートをどのように出したらいいか考えて弾くといいですね。
伴奏の中にオブリガートが見られる場合があります。(先程のアルベルティーのチェンバロソナタの中にもありましたが)これはメロディーとデュエットさせると、ふくよかな幅の広い表現になります。③(モーツァルト:ソナタK.330ときらきら星変奏曲K.265の場合)
これはその場面に応じてよい効果を生み出すことがあります。いろいろな弾き方やバランスを試してみることです。