ピアノ・技術的な問題・その1
ピアノの技術で理想なのは・・・これは他のことでも共通ですが・・・・「動きが100%音になる」ことです。これ以上もこれ以下もないです。つまり、普段の練習で「動きをピアノに伝え、それが思い通りの音になる」ことを丁寧に確かめつつ練習していくことが重要だということです。「正しく楽器に伝わっているかどうか。です。
このことは本当は「道具論」や「人間工学」の面から検証されるべきことでしょう。
レッスンをしててよく見受けられるのは「鍵盤に動きが届いていない」ケースです。
②から先が「意識が入っていない」ケースが多く見られます。これでは「最終的に動きが鍵盤に届かない」状態になってしまう。別に指先に力を入れるのではなく、ていねいにゆっくりと②と③の動きを使って鍵盤をそっと下ろすと、その感覚がお分かりいただけると思います。
つまり、いくら腕からの動きが大きくても、この②と③の状態が悪いと、動きをここで吸収してしまうことになります。このようなケースは多いので、お確かめいただけるといいと思います。
また「指の回転運動」の中で「どこに鍵盤があればよいか」ということ。手のポジションが高すぎると「スカ」のところに鍵盤があり、いくら動いても鍵盤をなでるだけ、になってしまいます。よって手のポジションがあまり高すぎるのも考えものです。
指導者は生徒の手をよく観察し「鍵盤に動きが伝わっているかどうか」という視点をもって見るべきだと思います。手の位置や角度をその都度調整し「伝わる位置」を模索していく。これは「譜読みの段階」から探っていく項目の1つです。
ごくごく単純な譜例。
わかりやすくするためにこういう単純なものを使って説明します。
四分音符、八分音符、十六分音符、速さは倍々になっていきます。これを歩き方にたとえてみましょう。実際歩いてみるとわかりますが「四分音符で歩くときは足の付け根からゆったりと」「八分音符で歩くときは膝から下でちょっと回転を速くする」「十六分音符ではつま先をちょこちょこと」動かします。いわば回転数に応じてギアチェンジするものとお考えいただければいいです(これも古い言い方かも、今は自動車、みんなオートマですから、どうしても知りたい方は教習所へ行ってミッション付きの運転を習ってください)
さて、(人間の指は時代が変わってもオートマにはならないので)そこで手を見てみます。
手、指、分かれているのは指の付け根からです。「指の付け根から大きく歩く=タッチ1」「第二関節から足早に歩く=タッチ2」「指先だけでちょこまか歩く=タッチ3」今、わかりやすくするために、3種類を出してみました。(もちろんもっと多様な可能性があるのは、言うまでもありません。肘や腕からのタッチも当然あります)これをこの練習曲に当てはめてみました。
動画1
いわゆる「ギアチェンジ」しているのがおわかりいただけると思います。ハイフィンガーでは、この区別は無理なことは、物理的におわかりいただけると思います。
つまり「タッチに必要な指の長さ」という「座標軸」を設定することにより「タッチの選択」にヒントが出てくることになります。ボリュームのある音、長く響かす音には、長く指を使う。細かい速く動かす音には指先の細かい動きを使う。しかし、指先は「鍵盤への最終伝達経路」としていつでも注意が必要、といったところです。
「決まり切ったいつものパターン」だけをやるのでなく「様々なタッチや音色の可能性を模索する」ことこそ、本当の「基礎」だと思います。もちろん、「タッチ」の問題は、「タッチにどのような長さを使うか」だけではないし、その「タッチの長さ」も指だけにとどまらず、腕から、肩からというのも考えられます。また、「鍵盤から指を離す」にも言及していきたいと思っています。次回は、その「指の長さを使い分ける」応用の実例を、動画で見ていきたいと思います。