初級から、中級、上級へのピアノ教育
・6月ごろはいつも全国的なピアノコンクールで、私も審査で飛び回ったり、生徒がコンクールを受けたりもします。
・さて、時々気になるのですが、「バッハのインベンションでバッハが嫌いになった」という言葉をよく耳にします。これには、「一般的なピアノ教育の欠陥」が見え隠れするように思います。
・ピアノでなく「登山」ということに置き換えて説明してみましょう。といっても「登山」については自分でやったこともないので、見当はずれなことを書いているかもしれません。もし不適切な記述があれば指摘いただければ幸いです。
・たとえば、はじめ、の頃は「トレッキング」誰でも出来るようなスケジュールで、特別な技術も要りません。ところが、あるていど難しくなると、体力をつけておかなければこなせなくなり、さらに道具を使う技術も必要になってきます。またさらには「長期計画での登山」まであるわけです。
・ピアノも、最初の頃は「トレッキング」と同じように、「ある程度練習して出来る。その範囲での楽しさ」を求めるわけですが、だいたい、バッハのインベンションやモーツァルト、ベートーヴェンなどのソナタぐらいからは「単なる反復練習」では形にならなくなります。それは「難しい山」を登っているのといっしょで、「さまざまな知識や手法、音楽の読み説き方」を必要とされているからです。数学でいえば「単なる足し算、引き算、掛け算」ぐらいでは手に負えなくなるという感じでしょうか?
・ではどうすればいいか。教師の側の問題だと思います。まずは、「トレッキング」の段階でも、「上級のための様々な手法」をその生徒に理解できる、消化できる単純な形や言葉で、レッスンの中に織り込んでいくことです。ただ、誰もが中級や上級に進むわけではないので、生徒の傾向や資質にも絶えず注意するべきだと思います。
・ここから先は、バッハやモーツァルト、ベートーヴェン、ショパンの芸術の世界です。豊かな音楽の本当の世界に足を踏み入れたのだと思います。あとは彼らの作品を生涯の友として大切にしていくといいと思います。