バッハとショパン・楽譜から学ぶ姿勢

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バッハのシンフォニアと、ショパンの作品に似ている箇所があります。だいぶ前に網干毅先生と行った市民講座「エチュードの美学」でこのことは発表しましました。(譜例1)
さて、譜例2ですが、このバッハの平均律のプレリュード。知らない方はそういらっしゃらないと思いますが、日本音楽の大家、宮城道雄氏がこの曲を、新たに開発した「琴の八十弦」で公開演奏したことは、あまり知られていないでしょう。
ところでAは間違いであり、Bが正しいことは言うまでもありません。実際弾いてみると、Aには響きの厚みは感じられません。また、左手で弾くC-Eに音の重みがありません。(赤○)Bは、響きの支えがしっかりしているので、より拡がりのある音楽だと思います。Bの方が優れたアイデアであるのは一目瞭然。Photo_3

この「長い音を大切に弾き、響きを豊かにする』手法は、ショパンがバラード第1番やソナタ第3番の第3楽章で、効果的に使っています。これはおそらくショパンがバッハから得た表現方法の応用のように思われます。これもAが正しくて、Bはたとえペダルが入っていても響きの厚みが物足りないと思います。
そうすると「長い音」というのは単に「音が時間的にどこまで響いているか」以上のものがあるはずです。ショパンのバラードの場合、作曲者によるダンパーペダルの印がしてあるので、音そのものはBのケースでも↑のところまでは残ります。ですから「長い音を弾くんだぞ」という演奏者の気持ちと、その気持ちから起きるタッチの変化を作曲者は求めているのでしょう。
バッハのケースでも、バロックの様式から、譜例1Aのように書かれていても「バスを長くのばし響きを整える」ことは演奏者の判断によってすることはあるでしょう。しかし同じようにこの「長い音を弾く」というタッチの変化、微妙な「間」の変化。それが「作曲者の強い要求」なのだと考えます。Photo_4

「楽譜」というものは「デジタル情報」です。しかし、そのデジタルの隙間から「微妙な心の動き」をわかってほしいと、作曲家は苦心しているように思われます。そのようなことを時代や様式を経て「古き良きものから学ぶ」ショパンの姿勢にも敬意を払います。

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