図面としての楽譜
ピアノの楽譜はなぜ通常2段か考えてみました。
これには2つの理由が考えられます。
1.上段→右手 下段→左手
2.上段 中央Cから上 下段→中央Cから下(これについては、現在通常に使われている大譜表が、上下対称になっています。完全5度に印があり(ト音記号とヘ音記号)5度圏も意識されているといえます。)
この2つの理由が考えられます。それで、この2つが適宜使い分けられているように思われますが、次のケースを見てみましょう。
①ピアノソナタ第14番(月光)第3楽章と
②第21番(ワルトシュタイン)第1楽章です。
このように2種類に分けられます。Aは「音の分布」がわかりやすくなっています。底の方から音が発生して盛り上がる様子が楽譜の音符の配置からも見て取れます。一方Bは左右の手の割り振りがすぐ分かるようになっています。
以前、ショパンの楽譜でも問題にしましたが、Aは音楽の響きを、Bは演奏方法を重視した書き方といえます。
さて、ある生徒にそれぞれの楽譜を見せたところ「音楽の第一印象が明らかに違う」とのことでした。とすると、楽譜を選ぶ時このようなことを重視しているかどうかもポイントになると思います。ただ「見やすい配置」というだけでなく、「作曲者の想起した意図」が図面としても楽譜に表れているかどうかも、考えるべきだと思います。
いろいろな版を調べてみました。
①
A ウィーン原典版 ヘンレ原典版 F.Liszt版 P.Dukas版 園田高弘版
B A.Schnabel版 L.Koeller版(Peters) A.Casella版 井口基成版
②
A ウィーン原典版 ヘンレ原典版 園田高弘版
B A.Schnabel版 L.Koeller版(Peters) A.Casella版 F.Liszt版 P.Dukas版 井口基成版