モーツァルトの天才性
私は、モーツァルトの天才はK.1のメヌエットに始まったと、信じて疑いません。そこでは無駄のない絶妙なデュエットが見られるからです。これを譜例にしてみました。①上の段は、オリジナルです。ところがもし、モーツァルトが下の段のように和音で伴奏を入れてしまったら、私はそのあとの「モーツァルト」がなかったと思うのであります。
K.330を見てみましょう。②上の段はオリジナル。この曲の左手に、メロディーとデュエットするパートがあります。この曲のこの部分がもしアルベルティーバスであったら、このデュエットがないばかりでなく、なんともバランスの悪い響きになると思います。
モーツァルトの曲を見ると、このような意味でバランスのとれたデュエットがここかしこに確認できます。それは6歳の時にもうすでに決定づけられたものであることを信じて疑いません。