本を読みながらでも?
こんにちは。
明石市魚住の大竹ピアノ教室の大竹道哉です。
本日もピアノに関するブログを発信していきます。
こちらを参照
・合奏をもとにしたピアノ演奏の在り方
・合奏をもとにしたピアノ演奏のモデル・レッスンについて
ピーター・コラッジオ 「ピアノ・テクニックの基本」音楽之友社 坂本暁美・坂本示洋 訳
80ページ Chapter 9 パフォーマンス成功の秘訣(あがりの克服法)
弾きながら会話が出来ますか?
パフォーマンスのときには、必ず気をそらされる出来事が起きるので、そのための準備をしておくことが重要です。どのようなことであれ、気をそらされると、集中力が失われます。ジュリアード音楽院のゴードン・スタンリー教授は、私が熱心に演奏しているときによく話しかけてきたものです。例えば、「今日来る途中の天気はどうだった?電車は混んでいた?」などと聞いてくるのです。同じことを今、私は自分の生徒に、それも初心者の段階からしています。最初は、彼らがスケールやハノンの練習曲を弾いている最中に話しかけます。初めのうちは、生徒たちはたいてい弾くのを止めてしまうのですが、すぐに弾きながら会話ができるようになります。リサイタルの曲を弾きながら会話ができるようになれば、パフォーマンスの準備ができているのです。
私は
1.一人の人間は多くの人の集合体である。(会社のようなもの)
2.一人の中での「多くの人」は、必要に応じて様々な組織を作っている
3.その中でも言葉を扱えるのは、一人である。(ここで私はそれを「社長」と表現している。)
と考えています。
つまり、自分の中に「社長」がいて「様々な部署」「部下」がいると考えてください。「ことばを使って何かの行動をする」というのは「社長命令」だと思ってください。これは例えば「水を飲もう」と言葉で考えられるのは社長一人です。
ピアノの練習の場合、たとえば最初、指使いに迷ったとします。これは「手という現場」で処理しきれない事象です。それを「社長命令」で、指使いを指令し現場はそれを習得する。社長は読み取った数字を言葉にしたり、あるいは指使いを感得た部署からの指令をまとめて送ったりします。そのときは「3の次1」で「次は4で返すといい、3ではだめだ」などと、言葉で考えています。しかし、練習していくうちに、その言葉は消えます。それは、そのセクションが「学習」したからです。
つまり、社長が教えて社員が覚える、社員が覚えると「言葉」そのものは減っていく。各パーツが「仕事を覚える」からです。そして、熟練してくると、「各パーツが言葉を経ないで、ものを考えます」たとえば、初見演奏でも、適宜な表情をもって演奏する人、その場その場にふさわしい指使いを使う人はいます。「ここのフレーズはここに山があるから、最初のドより次のレは強くして、そのための指は3よりも2だから」と言葉で考えていると、明らかに演奏の時間経過から遅れてしまいます。でも、各パーツがそのことを知らなかったら「言葉で」社長が教える必要があります
「社長」が言葉で指示するときの特徴としては
1.時間的にゆっくりである
2.一つのことにのみに集中しがちである。
つまり、立ち止まってひとつのことを考えながら行うには、言葉が必要。しかし、演奏時の流れの中で、なかなか使いづらいといえます。
言葉を使うことの利点としては「トランスポート」ができるということ。あるひとつのことを違う事象について応用するときに、言葉を使って行うことがあります。また、人に伝えるときには、いうまでもなく「言葉」が有効です。
「あがった状態」というのは、「言葉をつかさどる社長」が、全部のことをしようとして、オーバーワークになった状態だと考えられます。原因は「社長が社員を信用していない」「社員の学習、熟練度が低い」などが考えられます。
さて、先ほどの、コラッジオ先生の文章に戻りましょう。ここで「外部の刺激がある」状態を、図にしてみました。言葉をつかさどるところは、赤の線で切り取られてしまいます。ところが、各所はそれぞれ言葉を経ずとも考え、行動しています。図2の「上がった状態」では、それはできないことになります。
つまり、コラッジオ先生の記述は、「言葉を経ないでも考える状態」のことをさしています。
さてここであることを思い起こします。ロマン派の時代に活躍したカルクブレンナーというピアニスト、作曲家と、ショパンの発言です。
「本を読みながらでもピアノが弾ける」というカルクブレンナーの発言。これに対しショパンは「練習は音楽に集中すべきだ」ということ。
実はこれは、まったく次元の違うことをいっていることだと考えられます。カルクブレンナーは、「ピアノを弾くときには最終的には「言葉を経ずに考えられるようにすること」ショパンは「ピアノの練習はそれに集中すべきだ」ということ。つまり二人の言っていることは、まったく次元が違う、本来対比すべきでない発言と考えることができます。
人間は「言葉を使ったときだけ考えている」と考えがちですが、実は「言葉を使わなくとも考えている」のです。動物は言葉を持ちませんが、それぞれのレベルで考えて行動しています。
ただ、高次元な行動には、「言葉で組み立てながら考える」ことが必要だと考えられます。
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